ファミーユ・ジョリー(ニコラ・ジョリー)は、現オーナーであるニコラ・ジョリー氏が一代で名声を築き上げたロワールを代表するワイナリーの一つ。ニコラ氏は元々、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)を取得し、ウォールストリートで働くビジネスマンでした。1976年に仕事を辞めてフランスへ帰国。母が運営していたワイナリーを継ぎ、ワイン造りを始めました。
当初は他の生産者同様、ワインコンサルタントのアドバイスを受けて除草剤や化学肥料を使用していましたが、次第に畑に昆虫がいなくなり、土壌も明らかに変質しているのに気づいた彼は、農薬に頼らない自然な手法であるビオディナミ農法を取り入れたブドウ栽培を実践し始めます。
この農法を取り入れた当初、近隣の栽培家から非難を受けることもありましたが、畑が本来の力を取り戻し、エレガントなワインが出来るようになると関心を示す生産者が続々と出現。ブルゴーニュの偉大な女神ラルー・ビーズ・ルロワ氏でさえ彼の影響を受けていると言われるほどに、ニコラ氏はビオディナミの先駆者的な存在となりました。
フランスで初めてビオディナミを取り入れた「伝道師」
ビオディナミは今でこそフランス各地の一流生産者に導入されている農法ですが、フランスで初めてビオディナミを取り入れ成功したのは、ニコラ・ジョリー氏なのです。2001年にはビオディナミの団体「Return to Terroir」を創立し、現在は12カ国、約150生産者がこの団体に所属。現在も日本を含む世界中で、栽培者やワインラヴァーへの啓蒙や講演活動を行ない、「ビオディナミの伝道師」と呼ばれています。
僅か7haの単一畑から生み出される究極の白ワイン
ワイナリーが所有するのは温暖な海洋性気候で知られるアンジュ―&ソミュール地区の中でも、南西部右岸に広がるサヴニエールの畑。火山性の鉱物や砂岩などを含む、複雑なテロワールで知られており、シュナン・ブラン100%で造られる辛口白ワインは、ミネラル感を感じさせる香りと力強い骨格が特徴です。
複数所有する畑の中でも、最も有名なのがクレ・ド・セラン。この畑は12世紀にシトー派修道僧によって植えられ、800年以上に渡りブドウ栽培が行われている由緒ある区画です。単独所有する面積は7haで平均樹齢は40年以上、一番古い樹で80年という高樹齢のブドウ樹から複雑で濃縮感あふれる極上の白ワインが産み出されています。
その優れたブドウから造られるワインを、食通の王として有名なキュルノンスキー氏が、「イケムに並ぶ、フランスの5大白ワインの1つ」と評価。ロマネ・コンティや、シャトー・グリエなどと共に原産地呼称名をそのままワイン名として名乗ることができる最高峰のワインとして称えられているのです。
溢れる生命力と限りなく長い余韻に魅了される逸品
2007年以降、ワイナリーではニコラ氏の愛娘ヴィルジニー・ジョリー氏が中心となって栽培と醸造に携わっており、近年造られるワインのスタイルは、ニコラ氏らしい躍動感あふれる力強さは健在ながら、繊細さが加わり、これまでにない新しい世界観を楽しませてくれるようになったと言われています。
出来上がるワインはビオディナミによって引き出されたブドウ本来の持つエネルギーやパワーが感じられ、その圧倒的な存在感は白ワインのイメージを覆すほどの衝撃とともに、飲む者を虜にする珠玉の白ワイン。ワイン・スペクテータ―にて過去に行われたクレ・ド・セランの垂直試飲では、「開栓して1日経ってもへこたれることはなく、古いヴィンテージはまだ活気に満ちている」と取り上げられ、その熟成ポテンシャルが絶賛されています。
よりおいしく味わっていただくために、飲む前に数回でデキャンティングしていただくか、24時間前に抜栓していただくことをお勧めします。適温は14~15℃。抜栓後3~4日するとより一層ワインは開き、味わいが増していきます。