2021年からお付き合いが始まった、上山南部ワインぶどう部会の元会長・鈴木 昌人さんのベイリーA です。組合の方全員の意識が高く、素晴らしい仕立てをしているのですが、その中でも一際みなさまを取りまとめる鈴木さんの路地栽培のベイリーA の一文字短梢仕立ては見事でした。2022年より、昌人さんがサポートのもと、息子さんである隼人さんに経営を移行されました。お父さんの誠実さも確実に引き継がれていて、栽培管理も細やかなところまで完璧にされています。2023年も、21年とは異なり夏の暑さが厳しく、晩腐病も多い年で、とても厳しい選果と、摘房を必要とする年でもありました。しかしながら、そんな年のハンデをものともせずに、素晴らしいぶどうを仕立てて下さった鈴木さんには、感謝と敬意しかありません。
おかげさまで、凝縮した果実味、滑らかなタンニン、旨みの余韻、控えめな酸のバランスがとても強く、まさに私たちがマスカットベイリーAから目指す「日本のガメイ」だと思えます。そんな特級のぶどうを預けてくださる鈴木さんに恥じないワインを、今後ともますます進化させていきたいと思っております。
あまり多くは語りませんが、ぜひまずは、このワインを味わってみてください。きっと、ブラインドで、ベイリーA単一のワインだとわかる人は、少ないかもしれません。
◯味わい ブラックベリー、オレガノ、タバコ、たまり醤油の甘い香り
◯シーン お気に入りのレストランでゆっくりと楽しむ
◯温度帯 14~16℃
◯グラス 大きめのブルゴーニュグラス
◯お料理 秋刀魚や松茸など炭焼き全般、芋煮、青菜のオイル煮やお浸し
◯飲み頃 今 ~ 2033年
◯飲みきり 抜栓から1週間程度
ネコシリーズの赤「Bucci(ブッチ)」の上位cuvéeにあたります。
今では日本を代表する品種となったマスカットベイリーAですが、割と軽めの仕立ても多いなかで、これは真逆のしっかりと3ヶ月間程度醸してから、ゆっくりと樽熟成を1年間もかけていくワインです。上山市のぶどう農家・鈴木 隼人さんのベイリーAのポテンシャルだからこそ、できる技かもしれません。除梗したぶどうを、ほとんど手で触れることなく3ヶ月間醸していくのですが、全然ネガティブな方向にふれずに、本当に気持ちがいいくらい良い子に育ってくれます。
私の中でこのワインのコンセプトとしては、日本におけるブルゴーニュ・ガメイのようなイメージで仕込んでおります。黒い果実、複雑味、エレガントさ。フランスでのガメイとは、ぶどう品種も土壌も全く異なるので、味わいや香りを想像して頂いても全く別物です。しかしながら、日本で無理なく健全に育つ日本の風土に寄り添うぶどうだからこそ、より健全なワインに仕上がってくれるのだと思います。
2021年から始まったこのNeroですが、名前から想像してもわかるように、上記の3要素はしっかりと存在していて、とても良いワインに仕上がっていると思います。しかしながら、ワインのポテンシャルが高い分だけ、まだちょっとだけ硬いと思いますが、これから向こう5年くらいかけてゆっくりと開いていくと思います。( 醸造家 目黒 浩敬)